【イキシア(アクアマリン)】団結、誇り高い、秘めた恋
それは、エドワードにとって特別な呼び名だった。まだ年端もいかない頃に与えられた『鋼の錬金術師』という二つ名は、見事なまでに彼の生き様を簡潔に言い表している。そして彼を『鋼の』と呼ぶ人物のことも、エドワードにとっていつしか特別な存在になっていった。
それは、エドワードにとって特別な呼び名だった。まだ年端もいかない頃に与えられた『鋼の錬金術師』という二つ名は、見事なまでに彼の生き様を簡潔に言い表している。そして彼を『鋼の』と呼ぶ人物のことも、エドワードにとっていつしか特別な存在になっていった。
ロイは時々、幸福とは何かを考えることがある。己の生い立ちが平凡とは言えなくとも、なんだかんだ恵まれて育ったし、その環境下で得た知識や勘のおかげで今の自分があると自負している。この歳で大佐の地位に就いて、忠実で優秀な部下もできた。その中でも、両親から愛情深く育てられ、友人から好かれ、上官や下士官からも信頼されているであろうジャン・ハボック少尉のことが、ロイにとって幸福の象徴であると言っても過言ではない。
「分かるかね、ハボック少尉。これから特別な相手とデートなんだ」
「ハボック少尉、そろそろマスタング大佐を連れ戻してきてくれないかしら」
目の前には山のように積み上がった書類があるというのに、滅多に被らない内勤を口実にして、ロイとハボックは雑談に花を咲かせる。当然ながら、口を動かしつつもペンを動かす手は止めていない。
私にとって、マース・ヒューズという男は士官学校からの腐れ縁であり親友で、そして戦友だった。多分、彼にとっての私もそうだったに違いない。
お前の目は節穴か?と最後に付け足され、思わずハボックは溜息を漏らした。東の砂漠での視察土産だとロイが差し出したものだから、あわよくば高価な宝石か何かだと思ったのだけれど、まあ、そんなはずもなく。だからといって、小さな鉢植えに一本のサボテンというものがはたして恋人への土産に成り得るのか、それが現状一番の問題点である。
キッチンで夕飯の仕込みをしているハボックの背後から顔を覗かせたロイは、物珍しそうに鍋の中を覗き込む。
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