【カタクリ】初恋、寂しさに耐える
2024年03月10日

私にとって、マース・ヒューズという男は士官学校からの腐れ縁であり親友で、そして戦友だった。多分、彼にとっての私もそうだったに違いない。
イシュヴァールの戦地から戻るなり即恋人にプロポーズをして、慌ただしく挙げた結婚式には勿論招待されたし、仲人も務めた。急ごしらえとは思えないほど、とてもいい式に仕上がっていた。
そうなのだ。あの男に戦地など決して似合わない。大勢に囲まれ、笑顔に溢れた日向の世界こそが、本来いるべき場所なのだ。それなのに、どうして。綺麗に磨かれた墓石には花束が二つ。彼の妻子と、月命日にしか足を運ばない親友からの、それ。
「初恋は叶わないとよく言うが、自覚したのがあまりにも遅すぎたな」
二度と口にはできない言葉を飲み込み、そっと目を閉じた。